世界中で約1割の人が左利きと言われています。お子さんが左利きの場合、書道教室や学校ではどちらの手で書かせるか迷ってしまいますよね。今回SUKU×SUKU(スクスク)では、『書道玄海社』の池山光琇先生のブログに注目。先生は左利きの子どもを指導するときには、お子さんや親御さんとよく話し合い、意向を尊重することが大事だと語っています。そのうえで、迷っている場合は右手で書くことをすすめているそうです。その背景や根拠についても詳しくご紹介します。
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目次
池山先生は、左利きの生徒を指導するときは、本人や親御さんの意向を聞いた上で、迷っている場合は右手で書くことをおすすめしているそうです。その理由の一つとして、そもそも楷書の字形は、圧倒的多数であった右利きの書き手にとって書きやすいように発展してきたという特徴があるからと、ブログで語られています。
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池山先生
長い年月をかけて発展してきた楷書の字形の特徴である「右上がりの横画」、「右払いの独特な形状」などは、右手で書きやすい形になっています。
また日本で独自に発展した仮名文字も右回転のものが多く、これを左手で書くと、字を左手で隠してしまい書きづらくなります。
たしかに、左手で字が隠れてしまうと全体のバランスもとりづらくなりますよね。では、左利きの子は右手へ矯正をしたほうがよいのでしょうか?
「右手への矯正」で親御さんが主に心配される二つのことについて、池山先生はブログの中で次のように語られています。
漢字の成り立ちや毛筆の歴史から、書道は右手で書きやすいようになっていることが分かりました。しかし、左利きのお子さんに対して無理に右手で書かせることで、精神的なストレスを与えてしまはないでしょうか?
池山先生
無理やり右手で書くことを強要すれば、お子さんにストレスを与えかねません。そのため、親御さんとお子さんの意向を伺い、本人の意思を大切にしています。
書道でも他の習い事でも、強要されたことは続かないばかりか、うまくいかないときに「左利きの自分はだめだ」とネガティブになってしまうことも。
子どもが自分で選ぶことを手伝い、決めたことを尊重するということは、書道だけでなく、どんな勉強やスポーツでもとても大切なことですよね。
一般的に、鉛筆で字を書く技術と毛筆の技術は同じものと考えがちです。そのため、鉛筆を持つ手が左なら、毛筆も左手が書きやすいのでは?と思いますよね。
しかし、池山先生によると、そもそも毛筆と硬筆は必要な技術が異るそう。
池山先生
毛筆は硬筆とは異なり、筆圧を強くかける必要がありません。そのため、利き手ではないと力がはいらず上手く書けない、という心配はいりませんよ。
両手で書く訓練をすることは、脳の新たな分野を刺激するので、その活性化に役立つという話も聞きます。
このことを知らずに心配している親御さんもたくさんいるのではないでしょうか。
左利きということで、心配されることもあるかもしれません。ですが、書道教室からの強制ではなくお子さんや親御さんの意向も尊重してもらえるなら安心ですよね。
毛筆の基礎点画(運筆・払い・止めなど)は右利き用に培われてきたとのことですが、左手で書くと上達しにくいのでしょうか。
池山先生
そうとも言えません。左利きの人は右脳を使うため、芸術的な感性が優れていると言われます。
書道も利き手の左手を使うことで、芸術性に優れた作品を生み出す可能性が開けるのではないでしょうか。
池山先生は、左手と右手どちらで書くか迷っている場合は、右手で書くことをおすすめしているそうです。
池山先生
毛筆で書く最初の段階では、右利きの人でも「新たな技術を習得する」という意味で同じスタートラインに立っているので、右利き・左利き関係なく、右手で始めて問題ないと思いますよ。
左利きの人にとって書道は不利だと思われがちですが、「誰でもスタートラインは一緒だよ」ということが分かれば、やる気や自信に繋がりそうですね。
池山先生
角度や紙の置き方を調整して左手で書く、というやり方もあるようですが、最初から右手で書いたほうが上達が早い印象です。
ただし、小筆で名前などを書く場合には、本人が左手で書きたいという希望があればOKにしています。
右手であれ左手であれ、上達までの見通しが明るくなると、安心して頑張れそうですね。
実際に右手で書くことを選んだ生徒さんは、コツを掴んだらきれいに書けるようになったそうです。
池山先生
小学校5年生の左利きの男の子が「僕は左利きなので右手で書くと『な』の最後の部分がつぶれてしまうんです」と言っていました。
それは運筆の仕方をまだ知らないからで、筆の持ち方・書き方のコツを教えたら、右手でもきれいに潰れずに書けましたよ。
ただ、小さい名前のところは右手では書きにくいということだったので、そこは左手で書いてもらいました。
いままでうまく書けなかった「な」がきれいに書けるようになって、嬉しかったでしょうね。自信もついて、もっと書きたい気持ちになったのではないでしょうか。
矯正するかどうかといった狭い見方ではなく、「子どもが楽しく、自信をもって学ぶ」ことを目標に、子どもも親御さんも指導者も一緒にベストな方法を考えることが大切ですね。
書道教室や学校でも、左利きのお子さん自身が納得して練習できるように、ぜひ参考にしてみてください。
今回、取材にご協力いただいた書道玄海社幹事・光栄書道会主宰 池山光琇さんの詳細は以下のリンクからご覧ください。
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