書道講師の田邉葉心先生が、書道がはじまる新小学3年生の子どもやママ・パパたちに教えてあげたいこと。それは「書道道具のお手入れの仕方によって、作品の仕上がりが大きく変わる」ということです。上手に書けると、子どもたちのやる気もアップしますよね。そこで今回SUKU×SUKU(スクスク)は、千葉県の『書道教室いろ葉』を主宰する田邉先生のブログから、作品がきれいに仕上がる書道道具のお手入れ方法を3つ紹介します。
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目次
フェルトでできた毛筆用の下敷き。ほとんどの方は、書道用のバッグにきちんと収まるように二つに折ってから、半紙や硯箱と重ねて入れているのではないでしょうか。しかし、この方法には大きなデメリットがあると田邉先生は仰います。
田邉先生
下敷きをきつく折ると、折り目が付きますよね。すると、折り目の部分がぼこぼこしてとても書きづらくなってしまうんです。
まず、下敷きの上に半紙と硯箱を乗せてくるみます。
田邉先生
輪っかになった部分を下にして、バッグに入れましょう。脇に墨汁や新聞紙を入れると、きれいにしまえますよ!
これなら下敷きに折り目が付かないので、文字がきれいに書けるのだそう。ちょっとしたことですが、仕上がりには大きな差がつきそうですね。
書いている途中にパッカリと筆の毛が割れてしまうことがありませんか?こうなってしまうと、せっかく腕が上達してもきれいな文字が書けません。田邉先生によると、この筆割れには2つの原因があるのだとか。
1つは墨を付ける量が少なすぎること。そうでなければ、原因は「墨溜まり」にあるといいます。
田邉先生
筆の根元部分を触ってみて、ガチガチに固まっていたら要注意!このガチガチは墨の固まり「墨溜まり」です。
根元部分に洗い切れていない墨が固まってしまうと、筆がぼよ~んとラッキョウのような形になり、筆割れの原因となります。
ラッキョウ筆にならないようにするためには、お手入れの仕方が大切と田邉先生は仰います。
田邉先生
筆は、正しく洗えばかなり長持ちします。筆の状態の良し悪しが作品にも響いてくるので、しっかりお手入れしたいですね!
田邉先生曰く、筆のお手入れでもっとも大切なことは「使ったらすぐに洗う」ことなのだそう。
田邉先生
筆は時間を置けばおいただけ、ガチガチに固まり洗いづらくなります。
書くことに集中して時間が押すと、ついお手入れを後回しにしてしまいがちです。田邉先生によると、ラッキョウ筆のデメリットは洗いにくさだけではないのだとか。
田邉先生
墨溜まりができると、お手入れに余計な手間がかかるだけではありません。なにより筆に負担もかかってしまうので要注意です!
上達のためには、お手入れの時間も含め余裕を持つことが大切なのですね。万が一ガチガチに固まってしまったら、ぬるま湯に30分程度つけておくと洗いやすくなるそうですよ。
田邉先生
熱湯は毛が傷んでしまうので、ぬるま湯で洗いましょう。
筆の洗い方を間違えてしまうと毛がバサバサになり、作品にも影響がでてしまうと田邉先生は仰います。
田邉先生
「筆を洗う=穂先をゴシゴシ洗う」ではないのです。穂先をゴシゴシ洗うと、毛が切れたりバサバサになってしまいます。
バサバサの筆で書いた作品は起筆や収筆、ハネやはらいも、まとまらなくなるので気を付けましょう。
撮影:SUKU×SUKU編集部
田邉先生流の、筆がバサバサにならない洗い方のコツは「根元を揉む→軽くほぐし洗い」をていねいに繰り返すことだそうです。
1.全体を軽くほぐしながら、墨を洗い流します。
2.軽く洗い流したら、根元部分をよく揉みます。
3.根元の墨溜まりがほぐれてきたら、全体を軽くほぐしながら墨を洗い流します。
4.洗い流している水が透明になったら乾かしましょう。
田邉先生
ラッキョウ筆になってしまっていると最初は固いですが、負けないで続けるとだんだんほぐれてきます。かなりの強敵ですので、がっつり揉んでくださいね!
田邉先生によると、乾かす際には吊るして乾かすのがベストなのだそう。
田邉先生
吊るしてしばらくすると、墨が降りてきて穂先が黒くなります。そうしたら、また軽くほぐし洗いをして吊るしましょう。
墨も降りてこなくなり、完全に乾いたら全体を軽くほぐして終了です。
名前を書くときに使う小筆は、筆全体をほぐして使う方法と、穂先だけをほぐして使う方法があります。
田邉先生の教室では穂先だけをほぐして使うことをおすすめしているのだとか。
田邉先生
左は、全部ほぐした小筆で書いた文字。右は、穂先だけをほぐした小筆で書いた文字です。
全体をほぐした筆では、小さく書かなければならない名前の文字がつぶれてしまうことがあります。
穂先だけをほぐすと、太くなりすぎず書きやすいので、筆の力加減が難しい子どもでも、文字がつぶれずにきれいに書けますよ。
また、学校用の小筆を全部ほぐしてしまったお子さんに、田邉先生は次のようにアドバイスしています。
田邉先生
もう全部ほぐしちゃった子は、書くときにしっかり筆を立てて、力を入れすぎないように書くとよいですよ。毛の半分ぐらいで書くような気持ちで!
全部ほぐしてある小筆は、半紙用と同じように洗います。
穂先だけをほぐした小筆の場合は、墨をふき取る方法を田邉先生はおすすめしています。
田邉先生
学校の授業で使い終わった小筆は、半紙に線を引きながら優しく墨を拭き取ります。小筆を寝かせて持ち、力を入れず優しくですよ!
何本か線を引いて墨が薄くなったら、キャップを付けて筆巻に巻いてくださいね。
お手入れの時間をとれる自宅では、濡れティッシュを使って墨を拭き取る方法が紹介されています。
田邉先生
水で濡らしたティッシュを使い、下に引き下ろすような感じで墨が付いている部分を優しく拭います。小筆をくるくる回しながら、すべての面の墨を拭き取ってください。
また墨が付いているところと、付いていないところの境目はとくに気を付けてほしいと、田邉先生は仰います。
田邉先生
境目の墨が固まらないように、優しく拭ってくださいね。ある程度拭き取ったら、キャップを付けて保管します。
初めて小筆を使う子どもたちは、力のさじ加減が分からないことから書き方をアドバイスしてもうまく書けず、文字がつぶれてしまう子がほとんどなのだとか。そして「難しい」「鉛筆だったら書けるのに」「書道ってつまらない」という気持ちになってしまうそうです。
自分の名前だからなおさらのこと。そのため田邉先生は、小筆の穂先だけをほぐす方法をおすすめしているのだそうです。
田邉先生
穂先だけしかほぐしてなければ太く書くことはできないので、鉛筆で書くときのように形がとりやすくなります。
ほんの些細なことですが、最初の頃に少しでも成功体験を積ませてあげることができたら「書道って楽しい」となり、上達へ繋がると思っています。
お手入れの仕方を知らない子、苦手な子も、田邉先生の願いとお手入れ方法を知れば、さらに書道が楽しくなるのではないでしょうか。
学校の習字の時間や書道教室でお子さんがうまく書けずに書道を楽しめていないときは、田邉先生のアドバイスを参考に、一緒に道具を見直してみませんか。書きやすさや作品の仕上がりも変わってくると、もっと書道を楽しめるようになりますよ。
今回、取材にご協力いただいた『書道教室いろ葉』を主宰する田邉葉心さんの詳細は以下のリンクからご覧ください。
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